Fwd: a flabby will

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LOVE AFFAIR

 2018年11月28日午前1時48分。コラムニストの勝谷誠彦が亡くなった。57歳だった。
僕は彼の有料配信メールを2007年の開始当初から購読している。
いつもよりも大分早い時間にメールが配信されていた。
内容は彼の訃報であった。

 文章を読む限り、ここ数年は孤独感に苛まれているようだった。妻や娘の存在を明らかにしたことも、そういった孤独感からくるものであったのかも知れない。孤独に耐えられなくなりアルコール依存症が深まったのか、アルコール依存症が深まったから孤独感が増したのか、順番はわからない。
 周囲には気にかけてくれる優秀なスタッフもいて、そこまで孤独じゃなかっただろうと思うのだが、やはりテレビやラジオといったメディアでの出番が少なくなったのが本人としては気になっていたのだろうか。華やかな世界に居続けることができれば、あるいは兵庫県知事選に当選していれば、アルコール依存症を治療するという気力も湧いたのかも知れない。

 12年もの長い間、平均5000字前後の彼の文章を毎日読み続けてきた。一度もお会いしたこともお話したことも無かったが、常に身近な存在に感じていた(というより、感じざるをえないだろう)。あと20年くらいは彼の文章を毎日読み続けるのだろうかということを思い浮かべていた矢先の訃報であった。

 

 このようなとき、僕は毎回当たり前のことを思いつき、少しだけほっとする。
永遠に続くものなど無いのだと知らされる。
物事には必ず終わりがある。
楽しいことは終わるけど、苦しいこともいつかは終わる。執着からはいつか解放される。
新たな楽しみと苦しみと執着が公平にやってくる。

 

 2017年1月1日に彼の有料配信メールが始まった。以下に一部引用する。
(有料メールであるのでルール違反であるのは承知の上だが、一部引用ということでご容赦頂きたい)

 

 今年はどんな年になるのだろう。明日から、それについて考えて行きたい。昨日、サダム・フセインの処刑が執行された。コーランの最後のフレーズを読み終わらぬうちに、処刑台の板は外された。
 サダムの仇敵である、ムクタダ・サドルの名前を、処刑する人々が、サダムに投げつけ続けてもいた。
 到底、公正で説得力があるとは言い難い、「私刑」だった。
 昨年は「フェア」が蔑ろにされた年だったと言えるかもしれない。

 ならば、今年は「フェア」が重んじられるのだろうか。重んじられるのではなく、重んじなくてはいけない。私たちひとつの生の中で、それは意識されなくてはいけない。

 そのことを、頭のどこかに置きつつ、今日からあなたのもとに、日々私はメールを送ることになる。

 あなたと、私にとって、2007年が素晴らしい年でありますように。


 彼が初回のメールで選んだ話題は「フェア」を重んじることであった。
誤解されることが多かった人生だと思うが、一貫して「フェア」な人であったことは間違い無い。何故なら「フェア」でない人間の文章を12年超も読み続けたいと思うわけが無いからだ。

 

 告別式では、彼の愛したサザンオールスターズ「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」が流されるのだろうか。

 ご冥福をお祈り申し上げます。